心の花の歌人 > 心の花の歌人1

心の花の歌人 1


佐佐木幸綱
伊藤一彦 西田郁人 斎藤佐知子 宇都宮とよ
晋樹隆彦 青木 信 久松洋一 谷岡亜紀 黒岩剛仁
俵 万智 大口玲子 田中拓也 馬場昭徳 八城スナホ
矢部雅之 横山未来子 足立晶子 伊勢 勇 奥田亡羊
駒田晶子 佐佐木朋子 田中徹尾 藤島秀憲 本田一弘
松井千也子 小川真理子 高山邦男 佐佐木頼綱 白岩裕子
細溝洋子 佐佐木定綱 峰尾 碧 ・塩川郁子 長嶺元久
田中 薫 屋良健一郎 水本 光 佐藤モニカ 鈴木陽美
桐谷文子 森屋めぐみ 加賀谷実 経塚朋子
山口明子





 佐佐木幸綱 (ささき・ゆきつな)
歌集
  『群黎』 1970年 青土社
  『直立せよ一行の詩』 1972年 青土社
  『夏の鏡』 1976年 青土社
  『火を運ぶ』 1979年 青土社
  『反歌』 1989年 短歌新聞社
  『金色の獅子』 1989年 雁書館
  『瀧の時間』 1993年 ながらみ書房
  『旅人』1997年 ながらみ書房
  『アニマ』 1999年 河出書房新社 『佐佐木幸綱の世界』第9巻に所収
  『呑牛』 1998年 本阿弥書店
  『逆旅』 1999年 河出書房新社『佐佐木幸綱の世界』第15巻に所収
  『天馬』 2001年 梧葉出版
  『はじめての雪』 2003年 短歌研究社
  『百年の船』 2005年 角川書店
  『ムーンウォーク』 2011年 ながらみ書房
  『ほろほろとろとろ』 2014年 砂子屋書房
  『テオが来た日』 2020年 ながらみ書房
  『春のテオドール』 2021年 ながらみ書房
  現代歌人文庫『佐佐木幸綱歌集』 1977年 国文社
  現代歌人文庫『佐佐木幸綱歌集』 2011年 砂子屋書房
  『佐佐木幸綱作品集』 1996年 本阿弥書店
  合同歌集『男魂歌』 1971年 竹柏会出版部
  合同歌集『男魂歌』第2集 1975年 竹柏会出版部

全集
  『佐佐木幸綱の世界』(全16巻・河出書房新社・1998年〜1999年)

歌書・その他
  『萬葉へ』 1975年 青土社
  『中世の歌人たち』 1976年 日本放送出版協会
  『極北の声』 1976年 角川書店
  『小倉百人一首』 1977年 明光企画
  『詩の此岸』 1978年 九藝出版 
  『底より歌え』 1979年 小沢書店
  『手紙歳時記』 1980年 TBSブリタニカ
  『乱世に死す・源実朝』1981年 吉野教育出版
  『現代歌人』 1982年 桜楓社※共著
  『近代の短歌』 1982年 TBSブリタニカ※共著
  『佐佐木信綱』  1982年 桜楓社
  『柿本人麻呂ノート』 1982年 青土社
  『作歌の現場』 1982年 角川書店
  『万葉集東歌』 1982年 東京新聞出版局
  『現代短歌』 1983年 角川書店
  『鑑賞現代短歌』 1984年 雁書館
  『大伴家持』 1984年 さ・え・ら書房
  『東歌』 1984年 筑摩書房
  『旅の歌』 1985年 講談社
  『百人一首をおぼえよう』 1985年 さ・え・ら書房
  『旅の詩・詩の旅』 1988年 時事通信社
  『NHK短歌入門・短歌に親しむ』 1988年 日本放送協会
  『日本名歌集成』 1988年 学燈社※共著
  『短歌をつくろう』 (さ・え・ら書房・1989年)※共著
  『旅からの手紙』 1990年 光文社※編著
  『うた歳彩』 1991年 小学館
  『父へ贈るうた』 1995年 朝日新聞社※編著
  『現代短歌の全景―男たちのうた』 1995年 河出書房新社
  『詩歌句ノート』 1997年 朝日新聞社
  『短歌名言辞典』 1997年 東京書籍※編著
  『現代にとって短歌とは何か』 1998年 岩波書店※編著
  『万葉集を読む』 1998年 岩波書店
  『日本的感性と短歌』 1999年 岩波書店
  『現代短歌大事典』 2000年 三省堂※監修
  『〈われ〉の発見』 2002年 藤原書店※鶴見和子との対談集
  『男うた女うた 男性歌人篇』 2003年 中公新書
  『日本の名歌100選』 2003年 中経出版※監修
  『名歌名句辞典』 2004年 三省堂※共著
  『佐佐木信綱全歌集』 2004年 ながらみ書房※編著
  『芭蕉の言葉』 2005年 淡交社
  『万葉集の〈われ〉』 2007年 角川学芸出版
  『コレクション日本歌人選 柿本人麻呂』 2011年 笠間書院
  『一〇〇分de名著・万葉集』 2014年 NHK出版
  『知識ゼロからの短歌入門』 2020年 幻冬舎※監修


ペー ジトップへ
 伊藤一彦 (いとう・かずひこ)
1943年9月生まれ 宮崎県出身 宮崎県在住

歌集
 『瞑鳥記』      1974 年 反措定出版局
 『月語抄』      1977年 国文社
 『火の橘』      1982年 雁書館
 『青の風土記』    1987年 雁書館
 『伊藤一彦歌集』   1989年 砂子屋書房
 『森羅の光』     1991年 雁書
 『海号の歌』     1995年 雁書館
 『伊藤一彦作品集』  1997年 本阿弥書店
 『日の鬼の棲む』   1999年 短歌研究社
 『石榴笑ふな』    2001年 雁書館
 『続・伊藤一彦歌集』 2001年 砂子屋書房
 『新月の蜜』     2004年 雁書館
 『微笑の空』     2007年 角川書店
 『呼吸する土』    2007年 短歌新聞社
 『月の夜声』     2009年 本阿弥書店
 『待ち時間』     2012年 青磁社
 『土と人と星』    2015年 砂子屋書房
 『遠音よし遠見よし』 2017年 現代短歌社
 『光の庭』      2018年 ふらんす堂
 『伊藤一彦自選歌集―宮崎に生きるー』 2021年 黒潮文庫
歌書
 『定型の自画像』   1986年 砂子屋書房
 『若き牧水』     1989年 鉱脈社
 『歌のむこうに』   1990年 本阿弥書店
 『前川佐美雄』    1993年 本阿弥書店
 『空の炎』      1994年 砂子屋書房
 『矢的の月光』    1997年 鉱脈社
 『夢の階段』     2000年 雁書館
 『歌の自然 人の自然』2003年 雁書館
 『短歌のこころ』   2004年 鉱脈社
 『心を育てる 心が育てる』 2005年 鉱脈社
 『現代歌ことば入門』 2006年 日本放送協会出版
 『牧水の心を旅する』 2008年 角川学芸出版
 『ぼく、牧水!』(対談)2010年 角川書店
 『いざ行かむ、まだ見ぬ山へ』 2010年 鉱脈社
 『月光の涅槃』    2011年 ながらみ書房
 『百歳がうたう 百歳をうたう』 2013年 鉱脈社
 『若山牧水 その親和力を読む』  2015年 短歌研究社
 『MOON DROPS 月の雫』 2020年 鉱脈社

自選5首
   おとうとよ忘るるなかれ天翔ける鳥たちおもき内臓もつを  『瞑鳥記』
   動物園に行くたび思い深まれる鶴は怒りているにあらずや  『月語抄』
   月光の訛りて降るとわれいへどだれもだれも信じてくれぬ  『青の風土記』
   母の名は茜、子の名は雲なりき丘をしづかに下る野生馬  『海号の歌』
   梅の林過ぎてあふげば新生児微笑のごとき春の空あり  『微笑の空』


 西田郁人 (にしだ・いくと)
1934年8月生まれ 広島県出身 広島県在住

歌集 『漂鳥』  1998年 ながらみ 書房

自選5首
   海に来ても海の匂ひのせぬ浜よああ中立的な思想は非ず  『漂鳥』
   生きの身に虐げられし恨みとぞ幽霊の住む地球は美し
   ひとり酒飲めば手を打つ者はなく木枯らしの音吾が家かこむ
   菜の花の桜の花の匂ふ野を磨かれて走る蒸気機関車
   痩せに痩せされど砦の真ん中に夕日と遊んでゐるソクラテス




 斎藤佐知子 (さいとう・さちこ)
1944年6月生まれ 静岡県出身 神奈川県在住

歌集 『風峠』  1994年 本阿弥書 店
   『帰雲』 2011年 ながらみ書房

自選5首     
   傷つきあひ戦げる青葉 円環を閉ぢし形の縄が落ちゐる  『風峠』 
   足して足してマイナスとなる数もあらむたとえば空地の昼顔の花
   如月のかがやく雲が山の上を何になる気もなくてながるる  『帰雲』
   魂が来てゐるやうな月の庭しばいぬ、みけねこ、とほきみどりご
   傾ぎたる頭蓋の水を慎重に水平にせり背筋の冷えて




 宇都宮とよ (うつのみや・とよ)
1930年1月生まれ 秋田県出身 東京都在住

歌集 『地水説』         1989年 雁書館
   『エルキャピタンの雲』 1995年 雁書館

自選5首
   マダム・ボヴァリイの帽子の縁よりたちのぼるかげろう淡し春の十時  『地水説』
   雪の勿来にほそりと立てる一本の松にさえ聞く 人はいずかた 
                              『エルキャピタンの雲』
   はたはたの千の卵の眼が動く北の荒磯に雪ふぶくとき  (歌集未収録)
   ゆらゆらと自転車こぎゆく夕影の左折するまでわたしの娘
   漆黒の天に真っ黄色の月浮かぶモダンアートな旅しめくくる





 晋樹隆彦 (しんじゅ・たかひこ)
1944年5月生まれ 千葉県出身 神奈川県在住

歌集 『感傷賦』   1984年 雁書館
   『天心に帆』 1991年 北羊館
   『秘鑰』   2004年 はる書房
   『浸蝕』   2013年 本阿弥書店

自選5首
   涼をとる輌に五人の乗客をみな殺しにしたくはないか車掌よ  『感傷賦』
   疲れたる吾(あ)を眠らしむあずさ号大月駅を過ぐるころ雨  『天心に帆』
   留学の子の朝は来て夏のはな白き芙蓉の小さく愛(いと)しき  『秘鑰』
   六十数キロの長浜をおもい浸蝕をおもい蓮沼(はすぬま)を過ぎ茫茫たりし                                           『浸蝕』
   千里浜や九十九里浜はた日向灘浸蝕は日々の津波でもある 





 青木 信(あおき・のぶ)
1936年3月生まれ 新潟県出身 兵庫県在住

歌集 『ペルソナの 女』 1990年  本阿弥書店
   『汎神論』    1993年 本阿弥書店
歌書 『エセー恂{邦雄』1993年 書肆季節社

自選5首
   国破れ時代(とき)豹変す八月の命愛(を)しとて蝉が鳴くなり
   形なき思ひ引き継ぐ八月の岸にやすらふおはぐろとんぼ
   その日を生き残りし吾の噛みしむる八月のたまきはる命の質量
   たましひはむらぎもより出で転生(てんしやう)す鳥になれ風になれ色になれ
   勝者あれば敗者あるべし黄落(わうらく)の公孫樹さびさびと佇つ向かう岸


 久松洋一 (ひさまつ・よういち)
1957年10月生まれ 東京都出身 香川県在住

歌集 『ビジネス・ダ イアリー』   1994年 雁書館

自選5首
   死という語いともたやすく使われて生保会社の研修終わる
                        『ビジネス・ダイアリー』
   新妻の笑顔に送られ出でくれば中より鍵を掛ける音する
   我が妻が作りし七草粥には今年は三草しか入っておらず
   あちこちを探してトイレのドア越しに上司の指示を仰ぐことあり
   履いてきたスリッパは誰かが履いて行き別のスリッパで我も大浴場を出る




 谷岡亜紀 (たにおか・あき)
1959年11月生まれ 高知県出身 神奈川県在住

歌集 『臨界』  1993年 雁書館
   『アジア・バザール』 1999年 雁書館
   『闇市』 2006年 雁書館
   『風のファド』 2014年 短歌研究社
   『ひどいどしゃぶり』2020年 ながらみ書房

歌文集『香港 雨の都』 1997年 北冬舎
2in1シリーズ『谷岡亜紀歌集』 2003年 雁書館
セレクション歌人『谷岡亜紀集』 2007年 邑書林
共著 『短歌をつくろう』 1989年 さ・え・ら書房
評論集『〈劇〉的短歌論』 1993年 邑書林
   『佐佐木幸綱』 1996年 ながらみ書房
   『言葉の位相』 2018年 角川書店
エッセイ集『歌の旅』 2000年 高知新聞企業
詩集 『鳥人の朝』 2008年 思潮社

自選5首
   天啓を待つにあらねど夕空に仰ぐインドのハレー彗星  『臨界』
   文明がひとつ滅びる物語しつつおまえの翅脱がせゆく
   欲望をごった煮しつつ百年の雨の中なるこの植民地 『香港 雨の都』
   極東の悲しみの雨の黄昏を巡礼めきて影が行き交う 『アジア・バザール』
   空き缶を両手に捧げて人は唄う ここであそこで全ての場所で 『闇市』


 黒岩剛仁 (くろいわ・たけよし)
1959年8月生まれ 大阪府出身 東京都在住

歌集 『天機』 2002年 ながらみ書房
   『トリアージ』 2006年 ながらみ書房
   『野球小僧』 2019年 ながらみ書房

自選5首
   公園で夜の電話をかけおれば今きわやかに一本の恋 『天機』
   タッチアップなど分かっているのか神宮で原を観ている君のまばたき
   この先十年わがミッションは如何なるや時計の電池替えつつ思う『トリアージ』
   生涯初のカーブを父に投げ込みし野球場には芝生なかりき 『野球小僧』
   わが人生の昭和と平成比べつつ昭和の重さいかんともし難き


 俵 万智(たわら・まち)
「俵万智のチョコレートBOX」参照 → こちら






 大口玲子 (おおぐち・りょうこ)
1969年11月生まれ 東京都出身、宮崎県在住

歌集 『海量(ハイ リャン)』 1998年 雁書館
   『東北』  2002年 雁書館
   『ひたかみ』  2005年 雁書館
   『トリサンナイタ』  2012年 角川書店
   『桜の木にのぼる人』  2015年 短歌研究社
   『ザベリオ』  2019年 青磁社
   『自由』  2020年 書肆侃侃房
歌文集
    セレクション歌人『大口玲子集』 2008年 邑書林
    『神のパズル』  2016年 すいれん舎

自選5首
   形容詞過去教へむとルーシーに「さびしかつた」と二度言はせたり 『海量』
   白鳥の飛来地をいくつ隠したる東北のやはらかき肉体は 『ひたかみ』
   指さして「みづ」と言ふ子に「かは」といふ言葉教へてさびしくなりぬ 『トリサンナイタ』
   産めと言ひ殺せと言ひまた死ねと言ふ国家の声ありきまたあるごとし 『桜の木にのぼる人』
   生きのびる自由を捨てて餓死刑を選びしコルベ神父の自由 『自由』


ペー ジトップへ
 田中拓也 (たなか・たくや)
1971年12月生 千葉県出身 千葉県在住

歌集 『夏引』  2000年 ながらみ 書房
   『直道(ひたちみち)』 2004年 本阿弥書店
   『雲鳥』 2011年 ながらみ書房
   『東京(とうけい)』2019年 本阿弥書店


自選5首
   黄昏の都に向かい一本の矢を放ちたき夕暮れである 『夏引』
   新治の野にカッコウの声響き青き衣の夏は来にけり
   しろがねの雨走り去り夕されば筑波は淡き霧纏いたり 『直道』
   雲鳥のはためく夏の岬より八月の空澄み渡りたり 『雲鳥』
   江東の空の青さよ眩しさよ 明るさは常に寂しさを帯ぶ 『東京』



ペー ジトップへ
 馬場昭徳 (ばば・あきのり)
1948年7月生まれ 長崎県出身 長崎県在住

歌集 『河口まで』  1999年  雁書館
   『大き回廊』 2003年 耕文舎
   『マイルストーン』 2009年 角川書店
   『風の手力』 2014年 なんぷう堂
   『夏の水脈』 2019年 なんぷう堂
自選5首
    一年に三百六十五回ある十一時二分の今日のそのとき
    パラシュートふうはり開き吊されて青き空より落ちて来にけむ
    幾万の人が死ぬこと分りゐて落しきまるで実験のごと
    閃光は斧となりにき斧となり人の頭蓋を打ち砕きたり
    人がひとを殺むることの効率のよさ際立ちて原子爆弾


ペー ジトップへ
 八城スナ ホ(やしろ・すなお)
1933年3月‐2023年1月 京城出身 神奈川県在住

歌集 『青葉門』  2004年 ながらみ書房

自選5首
   我が内に寒く立ちたる一本の木あり窃かに故郷と呼ばん 『青葉門』
   暮れて行く冬空の色鋼(はがね)なすかく澄めとこそ 我が残る日々 
   夕まけてふとも開けたき小窓あり遠山に今日の日は錆びにつつ
   競ふあり躱して水面滑るあり覚満淵の鴨に夏来る
   雪光る上越国境恋ひにつつ柩に入らむ我かと思ふ




ペー ジトップへ
 矢部雅之 (やべ・まさゆき)
1966年3月生まれ 神奈川県出身 埼玉県在住

歌集 『友達ニ出会フ ノハ良イ事』  2003年 ながらみ書房

自選5首
   名を呼べばふりむく躯呼ばるるとふことそのものの歓びに満ち
                       『友達ニ出会フノハ良イ事』
   度のあはぬ眼鏡をかけてゐるやうな光のゆらぎ 人とむきあふ
   ゆたかなる唇がいま我にむけうごきそめたり うなづいてみる
   胸の闇をいでたる言葉は午後の陽にとまどひながら今しひとりへ
   霧のごときあはき思ひが湧きやまぬ良いのだらうか思慕と呼んでも




ペー ジトップへ
 横山未来 子(よこやま・みきこ)
1972年1月生まれ 東京都出身 東京都在住

歌集 『樹下のひとりの眠りのために』  1998年 短歌研究社
   『水をひらく手』 2003年 短歌研究社
   『花の線画』 2007年 青磁社
   『金の雨』  2012年 短歌研究社
   『午後の蝶』 2015年 ふらんす堂
   『とく来りませ』 2021年 砂子屋書房
歌文集『セレクション歌人30 横山未来子集』 2005年 邑書林
著書 『はじめてのやさしい短歌のつくりかた』 2015年 日本文芸社
         『のんびり読んで、すんなり身につく いちばんやさしい短歌』 2022年 日本文芸社

自選5首
   君が抱(いだ)くかなしみのそのほとりにてわれは真白き根を張りゆかむ                              『樹下の ひとりの眠りのために』
   彫像の背を撫づるごとかなしみの輪郭のみをわれは知りしか  『花の線画』
   白昼に覚めたる眼(まなこ)ひらきつつ舟の骨格を見わたすごとし
   脚垂りて花より蜂の去りしのち日は翳りたりたちまちにして  『金の雨』
   水滴ののこる手に乗すみどりごのあたまほどなる白き花菜(くわさい)を  『とく来りませ』




ペー ジトップへ
 足立晶子 (あだち・あきこ) 
静岡県出身 兵庫県在住

歌集 『白い部分』  1989年 雁書館
   『ゆめのゆめの』 1995年 ながらみ書房
   『雪耳(シュエアル)』 2001年 雁書館
   『ひよんの実』 2012年 ながらみ書房
   『はれひめ』 2021年 砂子屋書房

自選5首
   月よみにほんのり白き斜面見ゆ人とゐてなほひとを思へり 『白い部分』
   花ふぶくひと日ひとりで何処(いづこ)にも着かぬ電車に揺られてゐたし 『ゆめのゆめの』
   旅に見る郵便局の赤マーク日常がうす目してゐるやうな 『雪耳(シュエアル)』
   青田 白鷺 青田 白鷺 風の道ふかれふかれて青田 白鷺 『ひよんの実』
   夕刊の上に郵便その上に朝刊のあり時間が積もる 『はれひめ』


ペー ジトップへ
 伊勢 勇(いせ・いさむ)
1939年1月生まれ 神奈川県出身 東京都在住

合同歌集 『男魂歌』   1971年  竹柏会

自選5首
   海へ放つ言葉光れりうねりもつ波頭一線に崩れゆく時  『男魂歌』
   雄牛ずっしり陰嚢揺すりゆく時に下北の空雲立ちわたる
   殉国の意志さらさらに無かりせば君にあげよう千代紙の旗
   詩歌ついに青年ひとり救い得ぬ夕べ発ちゆく掌の中の甲虫
   ひたひたと暗殺者来る無花果の花無き季節を悲しむなかれ




ペー ジトップへ
 奥田亡羊 (おくだ・ぼうよう)
1967年6月生まれ 京都府出身 埼玉県在住

歌集 『亡羊』  2007年 短歌研究 社
   『男歌男』2017年 短歌研究社
自選5首
   宛先も差出人もわからない叫びをひとつ預かっている  『亡羊』
   白き雲ながるる水を跨ぐとき巨人のごとく我は老いたり
   砲弾がはるかな空を過る日のみずうみを脱ぐ蛇の恍惚
   自転車を燃やせば秋の青空にぱーんぱーんと音がするなり
   広き卓(つくえ)にひとり座れば人を無み向こう側にも行きて座らむぞ




ペー ジトップへ
 駒田晶子 (こまだ・あきこ)
1974年5月生まれ 福島県出身 宮城県在住

歌集 『銀河の水』  2008年 なが らみ書房
   『光のひび』 2015年 書肆侃侃房

自選5首
   クロスワードパズル終盤にさしかかり母の鶏冠の赤々と燃ゆ  『銀河の水』
   花見山ゆめのようなる山の名をはべらせてわがみちのくはあり
   靴下をまだ立てぬ足に穿かせやりてふたりで猫のケンカ見に行く
   わらび缶の中のわらびが伸びはじむ世界はおもくなるばかりなり
   ままごとに見えざる人も招かれて見えざるひとつの椀を渡しぬ  





ペー ジトップへ
佐佐木朋子(ささき・ ともこ)
1953年6月生まれ 東京都出身 東京都在住

歌集 『パロール』 2006年 紅書房
   『授記』  2012年 紅書房

自選5首
   ドイツ語のメニューを開けばきらきらとアスパラガスの輝く季節
   十月の地熱は空に払われてトカゲの脱皮半分終わる  『授記』
   笑いながら追いこしてゆき戻ってくる風はわたしに気づいたようだ
   〈追伸:誕生日を忘れたわけじゃないけど東京にはいません〉 『授記』
   受けついでゆく記憶のその先は読めない歴史年表のうらおもて 『パロール』




ペー ジトップへ
 田中徹尾 (たなか・てつお)
1954年8月生まれ 三重県出身 愛知県在住

歌集 『人定』  2003年 ながらみ書房
   『芒種の地』 2016年 ながらみ書房
   『吟』 2020年 六花書林
自選5首
   渋柿が魂を得て干し柿になる荒縄に吊られておれば『人定』
   心証は限りなくクロ 海の名の酒でも出して自白を待つか 『芒種の地』
   ひっそりと福島双葉の駅に立つ桜並木の息を聴きつつ 『吟』
   こんにちはあなたはどなたと聞く伯母の優しき傘の畳み方見る
   県外者のわれは参列許されず父の葬儀を動画にて見る


ペー ジトップへ
 藤島秀憲 (ふじしま・ひでのり)
1960年10月生まれ 埼玉県出身 東京都在住

歌集 『二丁目通信』  2009年 ながらみ書房
   『すずめ』 2013年 短歌研究社
   『ミステリー』 2019年 短歌研究社
   『オナカシロコ』 2020年 ふらんす堂
自選5首
   縁側の日差しの中に椎茸と父仰向けに乾きつつあり 『二丁目通信』
   もうみんな大人の顔つき体つき冬のすずめに子供はおらず 『すずめ』
   引き出せば二百枚目のティッシュかな死ぬことがまだ残されている 『ミステリー』
   箸置きのある生活に戻りたり朝のひかりが浅漬けに差す
   雨音のきこえる夜をふかぶかと体の底に眠りは降りる 『オナカシロコ』


ペー ジトップへ
 本田一弘 (ほんだ・かずひろ)
1969年3月生まれ 福島県出身 福島県在住

歌集 『銀の鶴』 2000年 雁書館
   『眉月集』 2010年 青磁社
   『磐梯』  2014年 青磁社
   『あらがね』2018年 ながらみ書房

自選5首
   エプロンを結ぶ指さき ほそき背にてふてふひとつやさしく生るる 『銀の鶴』
   いちにんを撰びしことはそのほかを撰ばざること春の雪ふる 『眉月集』
   磐梯山(ばんだい)のおほきかひなに抱かれて千年ずつと 種を蒔く ひと 
   生けるものは総て鳴くなり澄みとほる時間の瀧を秋と呼ぶなり
   正月に帰省せざりきふるさとの雪折れの音まぼろしに聞く




ペー ジトップへ
 松井千也 子(まつい・ちやこ)
1940年11月生まれ 千葉県出身 静岡県在住

歌集 『ひさかたの』   2002年  ながらみ書房

自選5首
   ペパーミントゼリーのように透明な固まりを持つ ふるさとの駅
                             『ひさかたの』
   無人駅のプラットホームに積もる雪まだ足跡のみあたらぬ昼
   花びらは小人のわらじ風ふけば群れなし坂をかけおりてゆく
   天からの水を濾過する漏斗かもその青涼しブルーヘブンは
   ポケットの底に眠りて冬を越すピーナッツにはなるなわが恋




 小川真理 子(おがわ・まりこ)
1970年3月生まれ 東京都出身 千葉県在住

歌集 『母音梯形 (トゥラペーズ)』  2002年 河出書房新社

自選5首
   わが部屋に君が来る夏、木々の名を記しただけの地図を渡さう  
                      『母音梯形(トゥラペーズ)』 
   なぜ我は人恋ふるたび春泥のもつとも深きところをめざす
   包帯を隙なく巻いてやりすごすはじめての五月かぜをおそれて  
                            (歌集未収録)
   蔑さるる官能を知らぬ少年が我の化粧(けはひ)の濃きを見咎む
   わたしから言葉脱がせてくれる君 聞き覚えなきこゑを生れしむ




高山邦男(たかやま・ くにお)
1959年8月生まれ 東京都出身 東京都在住
歌集 『インソムニア』 2016年 ながらみ書房

自選5首
   縁ありて品川駅まで客とゆく第一京浜の夜景となりて
   温かい気持ち未来より感じたり今際のわれが過去思ひしか
   わが仕事この酔ひし人を安全に送り届けて忘れられること
   赤信号ふと見れば泣いてゐる隣 同じ放送聞いてゐたのか 『インソムニア』
   人生の夕日とはこんな感じかなわれはまだ母に教はり生きる



ページトップへ
佐佐木頼綱(ささき・ よりつな)
1979年10月生まれ 東京都出身
自選5首
  明日という人の仮定の美しさ八合目より見ゆる夕焼
  夜の森に星一つずつ灯すごと義父(ちち)が小道に突ける白杖
  大ぶりにかつあたたかく手話をする男は初夏の雨に似てゐる
  宇宙色せし蜻蛉の目 美しく我らは夏の一瞬を分け
  広げれば風に広がる地図を抱き今カンボジア国境を越ゆ



ページトップへ
白岩裕子(しらいわ・ ひろこ)
1942年生まれ 神奈川県出身 神奈川県在住
歌集 『楷のしらべ』1994年 ながらみ書房

自選5首
   花芯まで月かげ浴びてねむりたる山ふぢはいま透きてしろがね
   竹群に衣ずれほどの音させてあかときの風過ぎてゆきたり
   円心に一羽しらさぎ 水の輪はひろがるひろがる水陰草まで
   ほどほどとふ語を知りてより秋風のごと透明な枷をわがもつ
   霧はれぬまま雪となり夜となり歳かへりみるしづけさとなる



ページトップへ
細溝洋子(ほそみぞ・ ようこ)
1956年10月生まれ 愛知県出身 愛知県在住
歌集 『コントラバス』  2008年 本阿弥書店
   『花片』     2016年 六花書林
自選5首
   カレンダーの反り美しき一月の泉のごとき十日間ほど    『コントラバス』
   鳥の群れいっせいに向きを変えるとき裏返さるる一枚の空
   あの庭に今年も梅が咲いたよと目白通信空を行き交う    『花片』
   日の暮れの池の面(おもて)の鯉の影〈だけど〉〈だから〉とすれ違いたり
   冬の字の一本の線伸びゆきてマフラーふいっと若者を巻く



ページトップへ
佐佐木定綱(ささき・ さだつな)
1986年5月生まれ 東京都出身 神奈川県在住
歌集 『月を食う』 2019年  KADOKAWA(角川文化振興財 団)

自選5首
   男性の吐瀉物眺める昼下がりカニチャーハンかおれも食いたい  『月を食う』
   自らのまわりに円を描くごと死んだ魚は机を濡らす
   湖のようなベッドを抜け出せば君のもとまでさざ波が立つ
   ぼくの持つバケツに落ちた月を食いめだかの腹はふくらんでゆく
   親鳥の不在のあいだに辞書の切れ端から虫の名を覚えだす



ページトップへ
峰尾 碧(みねお・みどり)
1948年8月生まれ 東京都出身 東京都在住
歌集 『森林画廊』 2018年 ながらみ書房

自選5首
   しばらくは空の裾野に立ち入りて夕映え匂ふ杏を摘まな
   蠧毒もて野とつながれり月の夜の鱗粉の疹闇に熱(ほとほ)る
   f字孔月の形に開きし頃契りし言葉その唇(くち)を衝く
   砂遊び見つつありしが束の間に三十年(みそとせ)経(ふ)りて肖(に)た子の遊ぶ
   丈たかき石垣伝ひ影ひとつとろりと落ちて黒猫となる



ページトップへ
長嶺元久(ながみね・ もとひさ)
1951年7月生まれ 宮崎県出身 宮崎県在住
歌集 『カルテ棚』 2012年 ながらみ書房
歌集 『百通り』  2017年 本阿弥書店

自選5首
   カルテ棚逝きたる人と生ける者薄きボードに仕切られてをり   『カルテ棚』
   チラーヂンSを造れる工場の稼働止みたり震災の後に
   「わたくしが生きてるかぎり先生はお元気でゐて診てくださいね」 『百通り』
   百人の生まれ出づれば百通り生き方のあり逝き方がある 
   針仕事全くせざるわれの中に縫工筋とふ部位ありと聞く



ページトップへ
田中 薫(たなか・かお る)
1947年10月生まれ 福岡県出身 千葉県在住

歌集 『土星蝕』 2019年 ながらみ書房

自選5首
   癖つよきものこそよけれ独活茗荷、久女に扮してゐる樹木希林  『土星蝕』
   空(から)の腑に真夏の冷酒充ちゆきて漸く自由になる 私から
   昏い空の底なき邃(ふか)さ見えてくる打上花火(スターマイン)の華ひらくとき
   会ひみてののちの心はいつしんに三十余年恋ひつつ憎む
   永遠の動体として静止するドガの踊子 世紀が明ける



ページトップへ
屋良健一郎(やら・け んいちろう)
1983年12月生まれ 沖縄県出身 沖縄県在住

自 選5首
   放課後の外階段に告げる愛をぬんでぃがぬんでぃが米軍機ゆく    「詩客」2012年8月3日号
   どれくらい食べれば傷を癒せるか「かめー、かめー」と迫るおばぁの   「心の花」2005年11月号
   モノクロの写真の街は白く燃ゆ コザの暴力美(は)しかりにけむ    「朝日新聞」2010年11月30日夕刊
   子を寝かし妻に向かえば秋の夜のわれに生(あ)れつつある相聞歌    「琉球新報」2019年10月26日
   断頭は寒緋桜に相次いで辺野古の海の工事は続く     「琉球新報」2017年2月25日



ページトップへ
水本 光(みずもと・あきら)
1933年3月生まれ 和歌山県出身 和歌山県在住
歌 集  『残照の野に』 2013年 ながらみ書房

自選5首
   木のことば土の姿をたしかめて客土なしゆく冬の果樹園   『残照の野に』
   日脚伸び影こき桃の根方より薄氷(うすらひ)溶けてゆく音のする
   よき桃を作る秘訣は日に一度樹にふるることと父は言ひたり
   収穫籠もちて樹下(こした)に待つ妻に肌のやうなる白桃わたす
   宿りくる神あるごとく手が動き実るみかんをつぎつぎと穫る  「短歌往来」2017年1月号


ページトップへ
佐藤モニカ(さとう・ もにか)
1974年生まれ 千葉県出身 沖縄県在住
歌集 『夏の領域』 2017年 本阿弥書店
   『白亜紀の風』 2021年 短歌研究社
詩集 『サントス港』 2017年 新星出版
   『世界は朝の』 2019年 新星出版
   『一本の樹木のように』 2021年 新星出版

自選5首
   一つ残しボタンをはづすポロシャツは夏の領域増やしゐるなり 『夏の領域』
   さやさやと風通しよき身体なり産みたるのちのわれうすみどり
   われを発ちこの世になじみゆく吾子に汽笛のやうなさびしさがある
   海風のよき日は空もひるがへりあをき樹木に結ぶその端 『白亜紀の風』
   月をまだ平たきものと思ひゐるをさなごの描く月のしづけさ 


ページトップへ
鈴木陽美(すずき・は るみ)
1961年10月生まれ 北海道出身 東京都在住
歌 集 『スピーチ・バルーン』2018年 ながらみ書房

自選5首
   ふるさとの夏の終わりは国道を薄荷を積んだトラックが行く 『スピーチ・バルーン』
   鳥の切手花の切手を組み合わせ小さな個展の案内がくる
   勝ち残るたびに孤独に近づくを椅子とりゲームのさなか気づかず
   くさまくら旅の鞄は重すぎるいつか手ぶらで死にゆくものを
   がろんがろん腰に鳴る鐘(ベル)はずすとき父から山の匂い立ちたり



ページトップへ
桐 谷文子(きりたに・ふみこ)
1947年12月生まれ  神奈川県出身 山梨県在住

歌 集
   『吾亦紅』心の花支部甲府なぎの会合同歌集 1998年 ながらみ書房
   『マザーグースの翼にのつて』 2021年  ながらみ書房
自選5首
   マイルスのトランペットに髪揺らし SO WHAT と言ひて生くべし
   影のみが我があることを知らしめる無人の駅に日傘を廻す
   まふたつに割られた月の半分が王家の谷の真昼に浮かぶ
   天窓の上に満月渡りをり総身に浴む光の束を
   太陽が櫛形山(くしがたやま)に沈んだら篝火草を玄関に置く

ページトップへ
森 屋めぐみ(もりや・めぐみ)
1963年3月生まれ 東京都出身 東京都在住
歌集 『猫の耳』 2014年 ながらみ書房
 
自選5首
   部屋の隅に離れて眠る猫の耳ときどき我を確かめている 『猫の耳』
   冬の日は球体となりて眠る猫春めいてまず尻尾をほどく
   逃げもせず同じ路地ゆく野良猫と風を分けあう熱帯夜かな (歌集未収録)
   木の下にでろりと眠る虎猫はいつかバターになるのだろうか 
   背を向けた猫のしっぽに春の鬱ちいさく宿る 窓あけようか



ページトップへ
加賀谷実(かがや・み のる)
1948年10月10日生まれ 秋田県出身 秋田県在 住
歌 集 『海の揺籃』 2011年 ながらみ書房

自選5首
   暮れてゆく秋の日の海なつかしき我に解脱を説いたりはせず
   牡蠣(かき)鉄(がね)に牡蠣を剥がせば牡蠣の殻沈(しず)きて海に牡蠣の光(かげ)おく
   水浅き朝(あした)の川の川霧に托鉢僧の如く立つ鷺
   研ぎゆけば出刃の裡なる鋼より嗚呼兵たりし父の匂いす
   千年の橅が橅の実落す音自ら仕舞う者とやすらぐ



ページトップへ
経塚朋子(きょうづ か・ともこ)
1956年5月生まれ  大阪府出身 東京都在住

歌 集 『カミツレを摘め』2016年 ながらみ書房

自選5首
   暗きアトリエにて生み出されし人体が水平線の窓辺に置かる  『カミツレを摘め』
   なげだせるわがてのひらを猫が舐む粘土の強(こは)さに痛む右の手
   比丘尼坂(びくにざか)に見初めし少女をこの岸にのこし寂しくないのか 父よ
   出不精の夫と花見をたのしめり富嶽三十六景御殿山の図
   わが編みし白詰草の冠の子はあゆみゆき二十歳となりぬ



ページトップへ
河 野千絵(こうの・ちえ)
長野県在住

自選5首
   頬近く雪の音する明るき夜樹々の梢も鋭く立ちおらむ
   水の辺の杳き葉うらを照らしいつ君と初めて見し蛍の火
   夫は西の吾は東の草を刈り陽が傾けば野の中で会う
   左利きの竹山妙子その夫の歌の清書に励みたまいき
   蝶も蜘蛛も眠る夜半にしんしんと百合は香れり自らのため



ページトップへ
山 口明子(やまぐち・あきこ)
1971年11月5日生まれ 茨城県出身 岩手県在住
歌集『さくらあやふく』 2012年 ながらみ書房
  『みちのくの空』  2019年 ながらみ書房

自選5首
   歌ひつつ子らと歩きし海の町 がれきにしづみ重機行き交ふ  『さくらあやふく』
   カーナビは知人の宅を不意に告ぐ がれきのみなる道走るとき
   北を指す針セシウムに狂ふ春さくらあやふく光りつつ咲く
   岩手山は白を激しき色としてみちのくの空占めてかがよふ   『みちのくの空』
   月一輪凍湖一輪響き合ひましづかに鳴る冬の音楽




ページ トップへ