受賞の言葉 佐佐木幸綱
読売文学賞 平成二四年二月二四日(金) 於:帝国ホテル本館三階『富士の間』
 今朝あらためて数えてみたら、『ムーンウォーク』には五一首、酒の歌がありました。歌集収録歌三八四首中の五一首ですから、かなりの数の酒の歌があるなと自分でおどろきました。
 ここ何年間か、若山牧水を視野に入れて意識的に酒の歌を作ってきました。若山牧水は生涯に三六〇首ほど酒の歌を作っているんですね。かなりの数です。私 は、この歌集の五一首を加えて、数では牧水に追いついたかなぁ、というところまできました。しかしまあ、考えてみると牧水は四三歳で亡くなっている。私は もう七〇を越えました。年齢で割ってみるとまだまだとても牧水に及ばない。
 もう少し長生きをして、もう少し酒を飲んで、もう少し酒の歌をつくろうと考えています。ただ、酒を飲めば酒の歌が出来るのならいいんですが、飲めば酒の歌ができるというわけでもない。その辺りむつかしいところなんですが……。
 今回こういう大きな賞を頂きました。この賞にはたくさん賞金がついてくるという話ですので、もうしばらく酒を飲んで、酒の歌をつくってゆきたいと思います。
 今日は、ありがとうございました。